10代後半から、繰り返し手に取る好きな作家の本。
その名を冠した記念館には行ったことがありませんでした。
ヨロン島 森瑤子墓碑
母ロス対策と老後の楽しみが見つかりました。
万年筆の濃淡の滲みから既に格調高く、
直筆の原稿は、時を経て益々その流麗な筆致がドラマチック。
空白さえも余韻にあふれ、
原稿用紙の上部に、
「著者校あり。残りは昼過ぎに入る予定」と、
担当編集者の生々しい赤が踊っています。
生涯に長短あわせて千篇もの作品を残した重厚な面構えの作家が、
「情報が過多になることの弊害・先入観の危険性・疑うことの大切さ」
を、静かな口調で語るビデオが流れています。
作家が出征する前に叔父にあてた手紙がありました。
横長の和紙に、トメやハライの効いた流れるような筆使いで、最後に、
「では、行って参ります。敬具 清張 叔父上様 叔母上様」とあります。
私も万年筆買いたい。
先生と同じモンブランがいい。
久々に物欲を刺激されました。
杉並区にあった作家の自宅を移築した、1階と2階の展示室は、
そのほとんどが、増殖を続けたという書庫・資料室・書斎から成り、迷路のようです。
多くの書架で区切られた書庫を、ガラス戸におでこをつけて、のぞきます。
・近代風俗図鑑
― 歌舞伎 祭礼 遊女 職人 南蛮 年中行事 遊里 洛中洛外 ー
・イギリスの生活と文化事典
・支那の刺繍 原色刷 昭和6
・朝日新聞縮刷版 ← 重箱より大きい、厚い、重そう。それが数十冊。
などなど、などなど。
約2時間、堪能しました。
館内で会ったのは、老夫婦一組と、ここで働く人達のみ。
売店で1冊本を購入して、館を出る前にトイレに行きました。
静かな静かなトイレです。
誰もいないはずなのに、何やら不穏な気配。
3つ並んだ白いドアの左端を開くそのとき、
ちょっと、緊張しました。
脳内BGMは、あの、火曜サスペンス劇場のテーマ曲。
♪~
館を出て、隣の小倉城を散策していたら、
妹から緊急のモラオの愚痴電話が入り、一気に現実に戻りました。
(こっちがほんとのサスペンス)
小倉城の石垣や石段が、雨に湿って輝いていました。
売店で買ったこの本を読みながら、対面座席のある鹿児島本線でゆっくり帰りましょう。
写真がたくさんでうれしい。
次は誰の記念館に行こうかな。
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