先週末、伊豆の実家に行ってきました。
いつもは東名高速でビューンと帰るのですが、
今回は横浜駅近くで用を済ませてからの帰省です。
第三京浜から東名にのるつもりが、途中で気が変わって、246で二宮あたりまで行き、
小田原厚木道路から箱根を越えて、4時間以上かけて帰ってきました。
7年前に父を、2年前に母を亡くして以来、
ひとり実家に向かう時の気持ちは、少しずつ変化しています。
毎回、両親のいろんな事を思い出しながら運転します。
彼らの死を咀嚼して少しずつ飲み込む。
泣いたり笑ったりの双極ドライブです。
毎回、好きな映画をかけてます。
今回は、「恋に落ちて」。
まちがいない組み合わせ。
純粋な、不倫の恋です。
ニューヨークのグランドセントラル駅の冒頭シーンは、アンジャッシュのコントみたい。
伏線もたくさん仕掛けられています。
既婚者同志の恋の始まり。
否応なく惹かれあっていく心情が、仕草や目線でアリアリと表現されて、
主役の二人の演技が絶妙で、思わず毎回膝を打つ。
メリル・ストリープもロバート・デニーロも当代一の役者ですもんね。
美男美女ではないのに、
ものすごくかっこよかったり、美しかったりする。
特にメリルストリープ。
生活感のある疲れた表情では肌もカサカサしてるように見えるけど、
恋する女性の煌めきが内側から輝いて絶世の美女にもなる。
自分の母を亡くして初めて気づいたシーンがありました。
メリル・ストリープの父親が病気で亡くなるんですね。
そのお葬式に向かう車の中で彼女が、窓の外を見ながらつぶやくんです。
「こんなに美しい日は初めて」
そう、そうなのよ。
父が死に、母も逝って、外の景色が、この上なく美しいんです。
晴れても降っても、明るくても、暗くても。
風が吹いても、木々が揺れても。
こんなにすべてが美しいのは、父と母がいないから。
大事な人がいなくなると、世の中は色を失うのではなく、気づかなかったきらめきを見せてくる。
父と母がいたときには知らなかったこの世の美しさ。
いつかくるさよならに備えて、もっと一緒に味わいたかった、この世の空気。
「こんなに美しい日は初めて」
この一言が、私を励ます。
誰と比べるものでもないけど、
みんなが通る道と思えばちょっと楽になる。
映画ってすごいよね。
つくりものの箱庭みたいな2時間に、ぎっちり人生が詰まってる。
一番好きなシーンは、ロバート・デニーロと、
「遅かったわね、疲れたでしょ」と、迎える妻の会話シーン。
妻は思いきって、
「この頃変よね、何かあったの?」と聞きます。
聞かずにはいられないほど、態度に出ちゃってたんですね、夫。
「何でもない」って最初は言うんです。
でも妻は、
「何でもないって言わないでよ、すごく勇気を出して聞いたのよ、何でもない、って言わないで。私はバカじゃない」
少し迷って、夫は打ち明けます。
「駅で女性に会ったんだ、でも何もなかった、何もしていない、もう終わったことなんだ」
それを聞いた妻は言います。
「そのほうが悪い」
何もなかったほうが悪い、って言うんですね。
そして、うなだれた夫の頬をバチーンと張って、席を立つ。
深い、かっこいい、いい人だよ、この妻。
メリル・ストリープの演技はちょい、鼻につきます。
ナヨナヨ、クネクネ。
ちょっと男らしさに欠けるよね、女だけど。
このキャラが増幅して、どすこい感を加えたのが、
「マディソン郡の橋」ですよね。
あれは、私の分類ではコメディです。
いっちばん好きなのは、
「シー・デビル」
この映画のメリル・ストリープは、最高です。
嫌みっぽい美魔女。
次回の帰省のお供は、「シー・デビル」で決まり。
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