2002年のアメリカ映画。
保険会社に長く勤め、家庭を持ち、娘を育て、定年退職の日を迎えた男。
退職後を共に過ごすはずだった妻が、急死。
掌中の珠と育てた娘は結婚を控えている。
主人公を演じるのは、ジャック・ニコルソン。
今年86歳。
数多い出演作のうち、記憶に残っているのは:
「さらば冬のかもめ」若きニコルソン36歳。ツルンとした顔、細身の体。単純なストーリーなのに、ずっしりくる。マーチが耳に残る。
「シャイニング」繰り返し見る、そのたびに新鮮に怖い。
「カッコーの巣の上で」もう一度見る勇気が、まだない。
「郵便配達は二度ベルを鳴らす」このニコルソンを拒める女はまず、いない。
「心みだれて」メリル・ストリープとパスタを食すシーンに憧れた。
「愛と追憶の日々」再婚するなら、このニコルソン。
「恋愛小説家」イケおじという言葉が生まれる前から、イケオジ。
ニコルソン65歳の時の作品、この「アバウト・シュミット」には、現実がギュウギュウに詰まっている。
42年の結婚生活の惰性。
妻が死んでようやく、妻を愛していた気がするシュミット。
慈しみ育てたはずの自慢の娘は、異星人のような婚約者の家族に溶け込んでいる。
こんなはずじゃなかったことばかり。
なぜこうなったんだろう。
でもシュミットは強い。
娘の結婚式。
立派に花嫁の父を務めあげる。
(スピーチの後、トイレに駆け込んでいたけど。)
誰も俺をわかってくれない。
娘はバカと結婚した。
俺にはどうしようもない。
俺は弱くて、じきに、死んでいく。
明日死んでも20年後に死んでも同じことだ。
俺は死に、俺を知る人も死んでいく。
そしたら、いなかったも同じことだ。
ひとりの家に戻り、一瞬、滂沱の涙にまみれる。
そこでこの映画は終わり。
この涙はなんだろう。
さみしさか。
あきらめか。
なぜ何度もこの映画をみてしまうんだろう。
今はまだ、答えが出ない。
追記:シュミットの娘の婚約者の母親役はキャシー・ベイツ。最高です。
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