むくみが改善して、手や足がシワシワしてきて、脈が落ち着いた母です。
酸素療法のおかげもあり、浅い呼吸も減りました。
顔つきも前より穏やかです。
先週末、娘が、
「あのさあ、ばあば、お腹すかないかなあ。ポカリだけだし。よくなるための治療じゃないから、仕方ないけど」
「もうちょっといけるんじゃないかな」
同じ思いが私の胸の底にも漂っていました。
むくんでカチカチだった足を思い出してはそれを打ち消し、
久しぶりに見る母の土踏まずを見てもしやもう一度、という希望が台頭する。
行ったり来たりです。
いつも優しく、母を慈しむ娘です。
同時に、冷静で客観的な提案や説明をしてくれる彼女。
医師として忙しい毎日を送る人です。
「もうだめなのかな」
目の縁を赤くして、母の手をさすりながら小さい声で言う彼女は、
母が愛してやまなかった孫の顔をしていました。
その日、主治医のところの看護師さんから電話があり、状況を報告した上で、
なんだかもう少しいけるんじゃないかって思っちゃうんです、と告白したら、
それは栄養をストップしたから楽になってるんだと思うわよ、と。
とにかく明日往診だから先生に診てもらいましょう、ということになりました。
その時、看護師さんが言ったんです。
エンシュア(栄養剤)はまだ残ってる?
あ、はい。少しあります。
再開ってことになったら、それでだいじょぶね。
確かに、そういいました。
ドキドキしながら妹だけにラインしました。
もしかしたら、まだいけるかもしれない。。。
教えてくれてありがとう。でもこの話はもうしないで。
でも言ってくれてありがとう、という返信でした。
往診当日。
もちろん先生は、私が看護師さんに話したことを承知です。
先生はまっすぐに私の顔を見て、
「人は、食べ物を手で取って口にいれる、それができなくなったらもう生きていられないのよね、それが自然よね。栄養を入れてお母さまが長らえたとしてそれは、ね。」
「はい、わかります」
「またむくみが戻ってきてるわね。やっぱり限界、かな」
「大丈夫?ごめんね、お母さま、今は苦しくないと思うわよ」
「このまま年は越せるような気がするわ」
今までと言ってることちがうじゃん!
経鼻胃管もやったし、胃ろうも造ったし、栄養だけになったし、それでも母が勝ち取った命だって、先生言ってたじゃん!
でも、先生の言ってることが腑に落ちもするのです。
そうよな。
母も私もがんばったよな。
病状が変わり、選択肢が示される度に、迷いながらも落としどころを見つけたはずが、
思っていたところに着地できずに
でも母が生きていることがうれしくてそれだけで鼻歌歌って、荒地を進む。
そんなふうに今までやってきたよな。
母の体が限界なら、それはもう、限界なのよ。
一足先にちがうとこに行くのよ。
私も後から行けるのよ。
またむくみが出始めたことに気づいた先生から
水分を1日600㎖から450㎖に減らすようにとの指示があり、
今年の往診を終えました。
一瞬、夢を見ました。
母とここで過ごす4度目のお正月を迎えられそう、これは現実です。
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