駅に向かう坂道。
夕焼けに後押しされて、母への思いが流れ出す。
この道をトトトっと下りながら、いったい何度母に電話したかしら。
いま何してる?私はこれからプール。
これから?お夕飯は?
豚汁作った。
もう遅いじゃない、気をつけなさいよ。
うん、お母さん、今日はどっかいった?
あのね、
~ ピンポーン ~
あ、誰か来たから、もう切るね、じゃ、気をつけなさいよ。
は~い。
そんな会話。
母を介護していた時、外に出て人々の往来を目にすると、忽然と悲しくなった。
母はもう歩けない。
ひとりで好きなように出かけたり、用事に追われて小走りしたりしない。
あの部屋で何もできず、何も言えず、ただ横たわっている。
早く戻ろう。
母のあたたかい体をさすろう。
外にある現実よりも、寝たきりの母という現実の方が、優しい。
母はどこに行っちゃったのかな。
この外気、日差し、風はこの世のもので、母はここにはもういない。
ちがうところに行ってしまった。
娘に
「ママ、ばあばが病気になってから、哀愁を身につけたね」と言われました。
ふとした時に、哀愁が漂ってるらしいです。
さもありなん。
哀愁と縁の無かった今までの半生に感謝。
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