大地。全4巻。
著者のパール・バックは、1892年アメリカに生まれ、生後3か月で、両親とともに中国に渡り、英語と中国語の両言語を話すバイリンガルとして育ちます。
バックは「生まれと祖先に関しては私は米国人だが、同情と感覚においては中国人だ」と語っています。
大学教育はアメリカで受けていますが、多くの年月を中国で過ごした彼女の2作目の小説である「大地」。初版発行は1931年です。
主人公の王龍(ワンルン)は中国の貧農に生まれ、働き者の妻とともに
必死に働き、土地を少しずつ買い、その土地を基に次々と成功をおさめ富豪となります。
土地は生活を支え、富を生み、決して裏切らない礎でした。
王龍がのし上がっていく前半が圧倒的に面白く、
後半は、富を成した王龍が、次々と起こる家族の問題に振り回され、不穏な展開です。
やがて、王龍の大事な土地を、息子たちがこっそりと売却する相談を始めます。
王龍が父親と暮らす「土の家」のシーンから始まり、
ラストも、「土の家」で終わります。
中学生のときにこの本を父から渡されて、
「おまえさんの名前はこの小説からとったんだ」と言われ、夢中で読みました。
私の名前には、「圭」という字が使われています。
あれから、何度この小説を手にとったことでしょう。
長~い小説なので、時々拾い読みをする程度ですが、毎回、共感したり感動する箇所がちがいます。
今、王龍と阿蘭(妻)が、ともに働く様子を、わが両親に重ねて読んでいます。
父がこの小説を生涯愛していたこと、
母はあんまり興味がなくて、
「小説から名前をとったなんて、かっこいいね!」と、
能天気なことを言っていたこと、
そんなことを思いながら読むと、格別です。
酒乱で、わがままで、すぐに大声をだして、顔が座布団みたいに大きくて、
出かけるとみんなが心底ほっとするような強烈な父でしたが、
教訓めいたことや、勉強しろなどと言われたことは一度もなく、
仕事と酒と庭を愛した、豪快な人でした。
酔っ払ったときは本当に手がつけられなくて、嫌な思いをたくさんしました。
あきらかに近所迷惑な大音量で音楽を鳴らしたり、
既に酔って飲み足りず、車で外に飲みに行こうとして誰にも止められず、家を出て30mで側溝に脱輪してそのまま動かなくなって、母と2人近所の目を気にしながら救出に行ったり、
炊飯器を壁に投げつけて大きな穴を開けたり。。。
ああ、枚挙にいとまなし。
小さい頃は拳骨も飛んできました。
それでも、亡くなった父をひたすら慕う母をみていると、ま、わかる気はするよ、と思いつつ、大地を読んでいます。
今夜もまた、父に会いに行ってきます。
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そういえば、いつかの父の誕生日に、映画化された「大地」のDVDをプレゼントしました。なんと王龍を白人が演じていました…
父からの感想は特になかった、と記憶しています…
これだ…まだ実家にあるかな…