1987年に発表されて、文庫になったのが1991年ですから、
20代で読んだ覚えがあります。
妻子と別れ、孤独な日々を送る40代の脚本家の男性が主人公。
幼い頃に死別した両親とそっくりな夫婦に出会います。
ジャンルは、ホラーか、SFなんだと思いますが、
田辺聖子さんが、「これは親恋いの小説」と解説しています。
30年以上前に読んだこの小説を再読しました。
主人公は、浅草の寄席で、12歳の時に死別した父親とそっくりの男に出会い、その男の家についていきます。
そこには、父親と同時に自動車事故で亡くなった母にそっくりの女性がいました。
異界の二人との交流で主人公は衰弱していきますが、最後は両親(だったとしか思えない)の愛によって、生に引き戻されます。
3人ですき焼きを食べに行き、「お前を自慢に思っているよ」と言いながら、両親は消えていきます。つらいけど、幸せな気持ちになるところ。
作者の山田太一さんは、ご母堂を11歳くらいで亡くされたそうです。
小説やエッセイもたくさん出していて、
「死んだ親にまた会いたい」という誰もが抱く気持ちをこんなふうに小説にするなんて、作家ってすごいなあ。
主人公にとっては、両親と住んだ浅草が、思い出に会える場所だったのでしょう。
私にとっては、両親が住んでいた伊豆の家がそういう場所かな。
母の介護とコロナでずっと帰っていません。
母がお骨になった今、一度帰らなくてはと思いながら、
母が元気だった時の思い出しかないあの家に帰るのがこわくて、
妹が帰国するのを待っています。
弟が時々風を通してくれています。
思いついて、グーグルマップでその家を見てみました。
そしたら、母に会えたんです。
ガレージから車が出るところで、妹と母が乗っているのです。
ハンドルを握って妹と何か話している元気な母が、います。
思わず、お母さん、と呼びかけました。
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